公立幼稚園、大津町の場合は2つの町立幼稚園ですが、その役割とは何か? このことを問い直す必要があります。
背景は「子ども子育て支援新制度」(以下、新制度)で幼稚園の保育料の利用者負担の考え方が変わるということにあります。

 まず、新制度下で、幼稚園の形態がどう変わるのか。

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新制度下に入る 認定こども園になる
(教育・保育施設)
幼保連携型認定こども園
幼稚園型認定こども園
幼稚園のまま(教育施設) 幼稚園
新制度に入らない 幼稚園のまま(教育施設) 幼稚園

上の図は、新制度に対応する教育・保育施設の形態を示しています。このうち現在の幼稚園が取りうる四つの選択肢をまとめると表のようになります。

 ①~③のように、新制度下に入るということは大きく2つの意味をもちます。ひとつは「施設型給付」を受けるということ、もうひとつは利用者の負担が応能負担(所得に応じた負担)になるということです。

【施設型給付】

 教育・保育施設に対し、国(内閣総理大臣)が定める基準により算定した額(公定価格)から利用者負担額を差し引いた額を支払うものです。
 制度ではこの給付は保護者に対するものですが、幼稚園の保育料として支払われるものなので実際には直接、施設に代理受領という形で支払われます。

 【応能負担】

 新制度下の私立幼稚園の利用者負担額について、国は下表のように所得に応じた5段階で上限額を定めています。また、この上限額をもとに市町村は私立幼稚園の保育料を定めることになります。(国の定める保育料水準より町が保育料を低く定めた場合、その差額は町が負担することになります。)

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  現在、私立幼稚園の運営のための経費は下のイメージ図のような構成となっています。基本は利用者負担と私学助成金ですが、その利用者負担を所得の段階に応じて、就園奨励費(国・町負担)という形で保護者に補助しているのですが、これは実質的な応能負担とも言えます。この就園奨励費にあたる部分を保護者ではなく、幼稚園に対して直接(代理)給付することになるわけです。つまり実質的には現状でも応能負担となっているということです。

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 ここからが町立幼稚園の問題になります。

まず、現在の大津町の町立・私立幼稚園の保育料をみてみます。 

保育料 給食費
町立 5,500円 3,700円
私立 22,000~23,000円(給食費含む)

町立は私立より低い設定になっています。ではこの差額は誰が負担しているのか。

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公立保育園には私立保育園のように私学助成金はありません。またもともとの利用者負担額が低いこともあり減免措置の対象はごくわずかです。その利用者負担を除く部分のほとんどを町が負担していることになります。

では、新制度の下で、大津町の町立幼稚園はどうなるのか。

記事冒頭の表の4つの選択肢の中では③の「新制度下での幼稚園」ということになります。国が新制度を進める以上、町の幼稚園がその制度を離れるわけにはいかないという事情、また認定こども園になるには施設の拡張や人員の充実などの新たな対応が必要になることがその理由です。

しかし町立幼稚園の運営費に対する国・県の補助はほとんどなく、新制度下でもそれは変わりません。今後も利用者負担と町負担で運営されるということになります。それでも利用者負担が「応能負担」になることは避けられません。

では利用者負担額はどうなるのか、国の説明は、

公立の幼稚園や保育所の利用者負担額については、現行の徴収額、公立施設の役割、意義、幼保・公私間のバランス、激変緩和の必要性等を考慮の上、最終的には市町村が判断すべきものです。設定に当たり、必ずしも国が定める所得階層区分どおりの区分とする必要はありませんが、国が定める上限は公私共通の基準となるため、それぞれの階層区分ごとに、国の定める基準の範囲内で設定されていることが必要になります。

ということですので、結論としては、国が定めた上限額水準の範囲内で市町村が決める、ということです。

それを決めるためには、現行の徴収額、公立施設の役割、意義、幼保・公私間のバランス、激変緩和の必要性等を考慮することが重要な意味を持ちます。ここで町立幼稚園の役割や意義を改めて問い直す必要が出てくることになります。

まず、現在の町立幼稚園の負担額は私立よりかなり低く設定されています。これには保育時間や長期休暇中の保育など、保育を提供する時間等の「量」の違いはありますが、それ以上に「就学前教育の機会を広く提供する」ということがあります。これには二つの見方があります。ひとつは負担額を低く抑えることによる機会の拡大、もうひとつは公教育としての教育内容の提供ということです。

負担額の問題は新制度で保育料が応能負担になれば対応できそうに思えますが、実際には保育料以外に実費として徴収される、例えば園服(制服)や教材・教具などの代金は私立のほうがどうしても高価になってしまうため、必ずしも「応能」とは言い切れない、つまり保育料以外の負担は応能ではないということです。

教育内容の問題では、私立の幼稚園・小中高校・大学も学校は特色を持った教育を提供します。宗教系の学校では「道徳」の代わりに「宗教」を取り入れることも認められていますし、そうでなくとも英語・音楽・スポーツ教育などを前面に出しているところもあります。そうした運営者が用意する特徴的なものではなく、公教育としての標準的・普遍的な教育内容というものを提供する選択肢も必要です。

 公的サービスと民間サービスの内容や質は当然違うものです。そして就学前教育の廉価性・標準性は、なによりも就学前教育の機会の「保障」に大きな役割を果たしている、ここに公立幼稚園の意義があると考えます。国が言う「幼保・公私間のバランス」もこれを踏まえて考えなければなりません。

 もう一つ、幼稚園が新制度下に入ることで町の支出が増えることになるのか、もしそうであれば一定の利用者負担の増加は考えなければならないことは当然です。しかし制度の仕組みとして支出が増えることはありません。町の支出を減らすことを目的とした保育料の値上げは就学前教育の機会を狭めることになり選択すべき方法ではありません。

 現在、町はいろいろな教育・保育サービスの利用料を決めようとしています。いずれのサービスにおいても、本来の目的やそのサービスの役割・意義を踏まえた判断を求めたいと思います。